ボクはこの春、小学2年生になりました。
ママが予想していた通りに やっぱり やや行き渋りが再開しました。
まず、起きることから、少し重たい感じになり、朝ごはんの席に着くまでに
ソファーでのゴロゴロがさらに深い状態となりました。
明るいポジティヴな声かけで、流れに乗せることができなくて、ついにママの手が伸びたのはiPad。
お兄ちゃんとボクの大好きな「マイゼンシスターズ」のマイクラ動画で誘導すること、でした。
やや声の高い2人の実況を流せば、たちまちソファから飛び起きるのです。
10分くらいの動画は、朝ごはんを見ながら食べさせるのに、絶好のように思えました。
「10分で終わって、良い流れに持って行けるならいいじゃない」って思っていました。
それに、食べながら見るということが苦手なボクでも
動画が終わった後に、楽しい勢いのあるまま 食べ続けることができたらいいのですから。
1日目は、とてもうまく行きました。
翌日は
「今起きたらマイゼン見れるよ」と耳元で囁けば、飛び起きました。
面白いくらいの効き目です。
3〜4日もすると
ボク「まだ食べ終わらないから、もう1つ見ていい? だって (朝食は)見ている間に食べるのものだから」
さらなる欲求が高まりました。
すると確実に2本見ることが 毎日になりました。
1週間ほど過ぎて迎えた週末。
ママと2人で食べる朝食の時に、ボクは、いつもiPadを挿して角度を調整するスタンドを片手に持ち
それをママにチラつかせて
無言で「見ていいでしょ」のリアクション。
ママ「え〜っ、ママと一緒に食べるのに、やめてよ〜」
たちまち不機嫌になるボク。
毎朝 お兄ちゃんと2人で動画を見ながら食べているのだから
「家族と一緒の時は見ない」は通用しないのでした。
なすすべがなく、ボクは土曜日も動画を見ながら、私の横で食べていました。
10日ほど経ったくらいで、ママは「やばいぞ」と感じ始めました。
どんどんゴムが伸びて、伸び切って、ついには戻らなくなりそうな危機感を覚えました。
そんな頃 発達のデコボコのある子育てに精通しているヒロミンが訪問してくれました。
※初登場=ヒロミン:保育士や児相の相談員を経て、現在は発達障害の子育てサポートをされているチャーミングで頼もしい人物。
ご自身の2人の子を育て上げ、なおも里親として発達にデコボコのあるお子さんを育てているという 知識と経験豊富な子育ての先生である。
ママ「悪き習慣をつけてしまって困っているんです。
結局 動画を見るのに夢中になって、最近は食べるのもおろそかになってしまって、2本も見るようになって・・・。
朝食をうまく食べさせるために始めたことなのに、動画を見ることが中心になって。
それがないと動かない感じがあるし・・・」
ヒロミン「朝の忙しい時に、動画で誘ったりね、そうなるのはわかる〜。
だけどマルチタスクが苦手だからね、見ながら食べることは難しいよね。
それに、習慣化するとASD傾向のデコボコちゃんは離れにくいのよね。
スムーズに行動させようとして、うまく動画やゲームを利用するのはいいんだけどね
怖いのよ〜。
麻薬と同じ、彼らの頭の中では、快感物質がゲームをする度に、ど〜んと分泌されちゃうの。
だからその刺激を求めて、ゲームや動画がなくてはならなくなる。
まずは、ママが朝の時間に『こうなればいいなぁ』って理想のイメージを持つことが大事よね」
「理想のイメージ」
その言葉が、ママの心に矢のように刺さりました。
そうです。そうです。
ママは、困った状況になってしまうという以前に、「理想のイメージ」を抱いてさえいませんでした。
「起床」「食事」「着替」「登校」
その4つをサクサク進行させようと思っているだけで
「理想のイメージ」なんてなくて、コマの進み具合によって、声かけをするだけで
全体の雰囲気みたいなことはお座なりにしていました。
食欲をそそるように配慮した料理を見もせず、動画をガン見して摂る朝食なんて
作ったママはもちろん、食べる方もかわいそうです。
考える力のある子なのに、エサで釣って動かす誘導なんてダメです。
早速、ママが「理想のイメージ」を前提にした言動に変えなきゃ!
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その日、3時半に帰宅したボクは、すでに気分が下り坂でした。
ボクは「漢字を覚えるのは好きやけど、書くのは嫌い」。
そうなんです。
視覚認識が逆だから、見たように書くのは不得意なのです。
毎日、「ごんべん」のてっぺんの点の向きを、担任の先生に赤ペンで直されています。
今日は、いつもより漢字の宿題が多いそう。
それに加え、「けいさんドリル」もドリルに書き込みでなくて
問題のひっ算を、ノートに書き写してから、解かなければいけません。
ボク「あ〜もうむりやん。あ〜も〜、今日は終わった。あ〜も〜あ〜も〜。今日はめっちゃ宿題多いもん」
やたらネガティヴ・ワードの多いボク。
楽しみのはずのスイミングも「ゲームができなくなるから」と渋々。
さらに踏んだり蹴ったりで、スイミングのテストでも不合格・・・。
スイミングから帰宅しても
ボク「あ〜も〜、今日は終わった。あ〜も〜ゲームできん」
ママ「大丈夫よ。今5時30分。寝るまでに4時間もあるんだよ」
ボク「だって宿題いっぱいやけん」
ママ「何時間宿題するんよ」
ボク「1時間」
ママ「それでも残りあと3時間」
ボク「ピアノもあるもん」
ママ「ピアノは何時間練習するの?」
ボク「時間じゃない、プン」
ママ「何分?」
ボク「30分」
ママ「でもまだ2時間30分もあるよ」
ボク「・・・」
このところのボクのモチベーションはもっぱらゲームです。
「新学期で不安を抱えているから、落ち着くならいいか」
と、少しママが約束を緩くし過ぎていた結果だと思います。
その夜・・・。
ボクが夕飯と宿題を済ませると、やる気のなさが影響して
ゲームを始めていいタイムリミット=8時30分には間に合いませんでした。
ママの許しを乞おうと、こちらにチラチラ視線を送りながら
「あ〜も〜無理やん。ゲームできんやん」というボク。
ボクは、約束を理解してるから、この態度なのです。
頑張ったから、少しくらいいいよといっていた、ママは悪い!
昨日までの自分を思い出して反省。
理想の夜時間の過ごし方は、このままお風呂を済ませて、デザートのアイス食べて
頑張りを労うためには寝る前の本を、ちょっとたくさん読んであげること。
しつこく泣いたり唸ったりするボクを横目に
ママ「お風呂入るね」
するとまもなく、お兄ちゃんに促されたボクが
「ボクくんも入るよ〜。ママ待っててね〜」と。
入ってからも、隙を見て「あ〜も〜」って不満を伝えようとするボク。
またもや取り合わず風呂を出るママ。
でもまた気を取り直して「湯船入るね」とボク。
そんなせめぎ合いを見ながら、パパが
「明日の朝、早起きできたらゲーム、今日の30分していいよ」といいました。
お兄ちゃんに励まされながら、デザートまで漕ぎ着けるボク。
ようやく、ボクとママとお兄ちゃんの3人が川の字に並んで、寝る前のご本の時間を迎え・・・。
でもまだ、ブツブツいうボク。
『ルドルフとイッパイアッテナ』を読み進めるに従って、物語に引き込まれるボク。
最終的には、すっかり機嫌を治して「ママ大好き」と2度ほど呟いて、眠りにつきました。
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翌朝、6時30分に起床。
もちろん原動力はゲームです。
ママ「ちゃんと時間で終わろうね。ご飯の時に動画は見ないよ。見てると食べるの遅くなるし、今日からは、そろそろ自分で歩いていかなきゃ」
ボク「わかっとるよー」
ゲームは、約束通りほぼ30分で終わり、ご飯。
動画がないことで、物足りなさを感じるのか、食べながら立ち歩き、落ち着かないボク。
先に食べ終わったお兄ちゃんに、何かと絡む様子。
結果、大音響で泣き始めました。
ボク「お兄ちゃんがイジワルした〜。叩いた〜」
お兄ちゃん「叩いてないって」
ボク「目に指が入った〜。痛い〜」
一部始終は見ていないけど、席を立ってお兄ちゃんのそばに絡みに行ったのはボクです。
その後も、朝食の半ばでソファーで寝転んでグズグズ。
パパ「今日は、雨降ってないし、歩いて行けよ〜。車で送っていかないよ〜。
ゲームする時間があったくらいなんだから〜」
お兄ちゃんが家を出て、パパも車に乗り、ママが玄関の扉を開けっぱなして外に出ると・・・
諦めたボクが準備をして出てきました。
ゆっくりトボトボ歩きながら、登校。
それを見届けて、パパの車が庭から出ました。
滑らかにはいかなかったけど、「こんなふうにしたい」っていうイメージに
確実に近付いた今朝でした。