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お姉ちゃんなしの面談3.18

3月18日
今回の面談は、急遽日程を決めたので、主治医は「お母様だけのつもりで予定しています」とのことでしたが、パパも仕事を早めに切り上げて一緒に行くことができました。
夕方 4時過ぎに家を出て、病院に向かいました。

ほぼ時間通りに面談が始まりました。

主治医「まずはお姉ちゃんの近況報告から・・・。
前回まで食べ物を残して、捨てているとのことでしたが、3月の2週目に入ってからは本当に完食しています。
27.5キロ程度だった体重は、現在28.1〜28.4キロに保たれています。
ちゃんと食べられていることは、血液の数値からも分かります。
ASTという値と、ALT(肝臓)の値を見ていただきたいのですが、この値は、今まで少ししか食べていない人が急に食べ始めると、肝臓に負担が掛かって、もっと酵素を出さなきゃ行かんぞとなって上がる値なのですが、このように上がってきています。上がり過ぎて3桁を超えたらダメですが、今は食べている証の数値です。

以前、リンが不足してくるかもしれないと心配していましたが、薬で補充するには及びませんでした。
これは、リンが含まれている牛乳を 彼女がちゃんと飲めているという値です。
貧血も心配していましたが、やや低めではありますが、これは、低体重だと脱水気味になるのですが、水分が行き渡り始めて、やや血液が薄くなっているという印象です。
このように血液の値は安定しています。

でも、1200kcalの食事だと、28.5キロくらいの辺りで、頭打ちです。
これ以上は増えないっていう状態になってくると思います。

そうしたら1400kcalに増やすか、鼻チューブなのですが、やはり彼女は鼻に遺物を通すことに不安があります。
『一旦通したらわりと一体化して違和感はないのだよ』と説明はするのですが。

もちろん、食べる量を増やすことでも良いです。
大きく一歩踏み出すということです。
食べるとお腹は痛くなるのですが、それでもそちらを選ぶということでも良いのです。

お腹は、動き出してはいるのですが、まだ完全ではないです。

(パソコンのモニターに入院時と現在のレントゲン画像を比較して見る)

入院当初は、ガスがたくさん溜まっていますが、今はほとんどありません。
丸いのは便ですが、硬い便ではありません。
多少、まとまった形で出てきているようです」

主治医からの近況報告を一通り聴いて、ママはやっと、前に進み始めたという印象を受けました。

摂食の改善プログラムが2月17日にスタートして、1ヶ月。
これまでの体調では、原因究明のカウンセリングどころではなかったけれど、今後は、彼女の歴史に迫って、心の中でどう動いていたのかを探って行くということでした。
そのためのお姉ちゃんへの話し掛け方の素材を得るため、パパやママから聴き取り調査をするということなのだというふうに、ママは理解しました。

主治医からの近況報告の後、今度は、パパとママが主に話す番になりました。
こういう機会を得たことで、パパはママとは異なる視点で、たくさんお姉ちゃんのこと記憶していることがわかりました。

お姉ちゃんが、小4の時、スイミングスクールが嫌になり、毎週、スイミングの前夜に発熱したこと。
すでに低体重に突入していた去年12月のピアノのコンクールの帰りに、それまで水しか口にしなかったのに販売機で「抹茶オレ」を買って飲んだり、パイのお菓子を食べたりしたこと。
食べ物への拘り、特に脂質が高い物への避け方への執拗な拘り方。
ママの目からは、当たり前というか違和感なく受け止めていて、口には出さなかったたことが、パパの意識には、たくさん気になることとして刻まれているようでした。

主治医と面談室に同席した入院病棟の担当医のお二人は、終始、よく聴いてくれました。

パパと二人で、お姉ちゃんの記憶を言葉にすることは、彼女のいないところに、その姿を描き出すような作業に感じられました。
まるで、形になって現れるような気がして、楽しくもありました。

お姉ちゃんは、現段階ではまだ診断名はありません。
まだ何が原因で食べることが困難になったかが分からないからです。

主に、主治医が疑っている病名は2つあります。

一つは、やせ症(痩せ願望があって食べないこと)。
それであるかもしれないと思う行動は大きく2つ。

1)部屋で立って過ごしていることが多い。
2)鏡を見ていることが多い。
1に関しては・・・
主治医「実際のやせ症の人は、太りたくないからうろうろ歩き回るのですが、彼女は立っているだけです。理由を尋ねると、ずっと横になっていると背中が痛いのだと。いわば床ずれのような感じですね。だけど、マットなどは、フカフカのものを用意しているので、それはないんだけどなぁと思います」

2に関しては・・・
主治医「看護師から鏡に自分の顔を写して見ているという報告が多く寄せられているのですが、要は、痩せている自分の顔がどのように見えるかを確認しているといったことです。
そういう行為がお家でもありましたか? 
思い当たることはございますか?」

ママ「うちでは彼女の部屋に鏡はありませんでした。
だから鏡をよく見ているということはないです。
校則が厳しくて、洗面所の鏡の前で、前髪を切り揃えるのに時間をかけていたことはあります。
そういう時は、鏡の前にいることが長いです」

主治医「ではそれは目的があって必要に応じて鏡を見ているということですね」

あまり、やせ症ではないであろうという見方のようでした。
主治医は続けます。
「もう一つ考えられるのは、恐怖心からくる場合です。
この場合の病名は、回避・制限性食物摂取症といいます。
お姉ちゃんの場合は、こちらが有力だと思っています。
こだわりや不安が強くて、主に元々の特性、いわゆる発達障害などが元にあることが考えられます。
今、ぼくからお姉ちゃんを見ていて、そう感じることはあまりないのですがね。

弟さんたちはASDだとお聞きしてますが、どんな感じですか?
生活に支障はないですか?」

それからたくさん弟たちの話をしました。
話していくうちに、お姉ちゃんとボクは似ているような気がしました。

そうしておよそ90分の面談の中で、主治医は幾度も
「それは有力な情報です」と相槌を打ってくれていました。
「これからお姉ちゃんの聴き取りを行なっていく上で、たくさん話したいなぁと思うことができました。
ありがとうございました」
と、そんなふうにいいました。

主治医はお話の中で、お姉ちゃんのことをこう表現しました。
「これまでの彼女のピアノに向かう姿勢は、大変なことも乗り越えて、楽みに変えたというようなガッツがあるように思います。
だから、そう簡単に吹奏楽部でも、演奏すること自体に根を上げるようには思えないのです。
そこに多少の違和感を覚えています。
先輩の楽器を誤って落としてしまった時に、彼女の心の中でどんな心の動きがあったのか、知りたいです」

ママも、本当にその通りだと思いました。

「1ヶ月に1回くらい、こういう機会を持ちたいと思っています」
最後に主治医はこういいました。

パパとママは、お礼をいって、別れを告げて、エレベーターに乗りました。

パパ「次の面談は4月の中旬っていってたね。病院でお姉ちゃんは誕生日を迎えるのかぁ」

ママ「誕生日だって、病院の人たちに気づいてもらえると良いよね」

15歳の誕生日は、きっと忘れられないつらい記憶になるんだろうな。

お姉ちゃんのこれまでのいろんなことを考えながら、帰路につきました。

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